介護の対象は、高齢者です。高齢者の特徴を知ることで機能訓練もケアもしやすくなります。
身体的な特徴もなんですが、心理的な特徴も理解していないと思わぬ抵抗を受けたりします。
身体的にも心理的にも理解するといいケアができます。
- 身体的な特徴・心理的な特徴
- 高齢者の疾患の特徴
- 老年症候群
身体的な特徴・心理的な特徴
加齢に伴う心身機能の低下を老化といいます。老化はすべての人におこる不可逆的な変化です。
老化には、生理的老化と病的老化があります。
生理的老化とは、加齢による自然な老化をいいます。
病的老化とは、病気などが原因となって生理的老化が加速し、病的状態を引き起こすことです。



高齢者の疾患の特徴

「非定型的」な症状とは
症状が診断基準と異なり、長江がはっきりしない(否定形的)のは、とくに75歳以上の後期高齢者で顕著です。たとえば、心不全で呼吸音などの心不全徴候がみられず、食欲低下や元気のなさなどがめだつ、肺炎で発熱やせき・痰などの症状が出ないなどです。
ふだんと違うようす(食欲不振、失禁、倦怠感など)がみられたら、背後に何らかの病気が隠れている可能性を考えます。
薬剤に対する特徴的な反応とは
薬剤については、高齢者では副作用が出やすくなります。慢性疾患や複数の疾患で、服用する薬が多くなる(多剤併用)ことが原因としてあげられます。
老年症候群
老年症候群とは、加齢による心身機能の低下によって引き起こされる様々な症状・病態をいいます。
- フレイル、サルコペニア
- 意識障害、せん妄
- 抑うつ
- 認知機能障害
- 低栄養、食欲不振
- 脱水
- 起立性低血圧
- めまい、ふらつき
- 視聴覚障害
- 廃用症候群
- 尿失禁
- 手足のしびれ
- 誤嚥、嚥下障害
- 転倒、転落
- 便秘
- 貧血
- 骨折
- 骨粗鬆症
- 低体温
原因が多様ではっきりせず、治療よりも予防と適切な対応が重要となります。
フレイル
高齢になって、筋力や活動が低下している状態をフレイルといいます。健康と病気の中間の段階で、進行すると寝たきりや廃用症候群になるおそれがある。
- 体重減少
- 歩行速度低下
- 握力低下
- 疲れやすい
- 身体活動レベルの低下
5項目のうち3項目以上あればフレイルとみなされる
適切な運動、適切な食事、社会活動への参加を通じて、フレイルに陥らないことが重要です。また、フレイルとなっても、上記の対応をこころがけることで再び健常な状態に戻ることは十分に可能です。
サルコペニア
加齢に伴う骨格筋量の減少をサルコペニア(華麗性筋肉減少症)といいます。
近年では、筋量の減少に加えて、筋力や身体機能の低下を含めた概念でとらえられ、この場合、フレイルの一部とも考えられます。
適度な筋力トレーニングなどの運動、適切な食事、また、肥満や極度のやせも身体活動の低下を招き、筋肉を低下させるので、体重管理も重要です。
廃用症候群
活動性の低下によって生じる身体機能、精神機能の全般的な低下を廃用症候群といいます。身体を動かさず精神的活動が少なくなることで、筋肉の萎縮、関節の拘縮、褥瘡、起立性低血圧、認知機能障害、失禁、抑うつなどが生じる。
廃用症候群は悪循環をきたすことが多く、何らかの原因で活動性が低下する気力が失われ、されに身体活動が減少し、徐々に身体機能が崩壊していきます。

骨折や疾病などで長期間安静にしなければならない場合など、廃用症候群への注意が必要です。ベッド上での関節可動域訓練や筋力トレーニングなど、できる限り身体を動かすようにすることが重要です。
誤嚥
飲食物や分泌物などの異物が気道に入ることを誤嚥といいます。筋力低下、嚥下反射やせき反射の低下などが、誤嚥を引き起こす原因となります。また、神経疾患や薬剤、寝たきり状態なども要因となります。
誤嚥した場合、むせ、せき、痰、発熱、呼吸困難などがみられますが、高齢者では、自覚がない不顕性誤嚥が繰り返されていることもあります。
誤嚥は、誤嚥性肺炎を引き起こすことも多く、高齢者の発熱の原因や死因として、注意が必要です。
誤嚥を防ぐには、口腔ケア、栄養状態の改善、食事形態の工夫、食事の姿勢の調整、嚥下訓練などを実施します。
食物のかすや分泌物、口腔内細菌などが、誤嚥により気道から肺に入ることで引き起こされる肺炎。全身状態が悪化している場合などは、少量の誤嚥でも起こることがある。
脱水
体内水分貯蔵量の減少、口の渇きを覚えにく、利尿薬の服用などにより、高齢者では脱水のリスクが大きくなります。また、認知機能やADL(日常生活動作)の低下により、自分で水を飲むことが難しくて脱水になることもあります。
脱水が強くなると、立ちくらみや全身倦怠感、頭痛、吐き気、食欲不振などが生じ、進行すると意識障害を引き起こすことがある。
居室の温度や飲食量、尿量に注意し、こまめに水分補給をするように気をつけます。自分での飲水が難しい方には、そのための介助も必要です。
不眠
加齢とともに、夜間の睡眠時間は短縮し、眠りが浅くなります。中途覚醒や早朝覚醒が増え、不眠を自覚する人が多くなります。また、生理的な変化に加えて、抑うつや不安などの心理的要因、身体疾患の状況や睡眠時無呼吸、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などの身体的要因も不眠の原因となる。
- 日中に適度な運動をする
- 昼寝の時間を短縮するなどで、昼夜の生活リズムをつくり
- 照明や温度、寝具などで快適な入眠環境を整えるように配慮します
- 睡眠薬を使う場合は、習慣的な使用や多様に注意します
- 深酒は中途覚醒の原因となったり、深い睡眠を妨げたりすることがある
失禁
失禁とは、自分の意思に反して尿や弁をトイレ以外などで排泄してしまうことで、尿失禁と便失禁があります。
尿失禁(便失禁も)は、すべて医学的治療を要するものではありません。
薬物療法で用いられる治療薬は、神経系の副作用を生じさせることがあるので注意を要する。
脊髄損傷などを原因とした神経障害により、暴行に一定量の尿がたまっても尿意を感じられず、反射的にもれてしまうことを反射性尿失禁といいます。

まとめ
- 高齢者の廃用症候群の進行によってADLが低下していく
- 老化によって能力は低下していく
- 老化していくことを理解してケアにあたらなければならない
- 肺炎は死亡原因の上位です。特に、誤嚥性肺炎は高齢者にはよく見られる肺炎です
- 分からないうちに脱水が起きていることが多く、水分摂取量に注意しなければならない
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