バイタルサインは、利用者様の体調を測定できる大事な指標です。医療従事者も介護職も頼りにするものです。
基準値を把握しておきましょう。
- バイタルサイン
- 検査と検査値
バイタルサイン
バイタルサインは、体温、脈拍、血圧、呼吸、意識レベルの5つです。
バイタルサイン | 基準値 | 備考 |
体温 | 36.5±0.5℃ | 34℃以下 低体温 37℃以上 高体温 |
脈拍 | 60~85回/分 | 100以上 頻脈 60未満 徐脈 |
血圧 | 正常血圧 120/80mmHg未満 | 140/90mmHg 高血圧 高圧目標 130/80mmHg未満(75歳未満) 140/90mmHg未満(75歳以上) |
呼吸 | 12~18回/分 | 25回以上 頻呼吸 9回以下 徐呼吸 |
意識レベル | 清明であること | ー |
個人によってバイタルサインは違います。普段のバイタルサインの値を把握しておくと変化に早く気づき迅速な対応ができます。
体温
- 高齢者は基礎代謝が低下するため、成人より体温が低めです
- 個人差も大きく、平常時の体温を把握しておく必要がある
- 低体温は、環境、低栄養、甲状腺機能低下症、薬剤の影響などで生じます
- 発熱は、感染、悪性腫瘍、膠原病、甲状腺機能亢進症、熱中症、脱水でも起きます
- 高齢者は、感染症でも発熱がみられないこともあり、発熱と疾患の重症度が一致しないことがある
- 原因不明の発熱(不明熱)が高齢者は多い
- 解熱せずに持続する発熱のことを稽留熱といいます
- 急激な発熱と解熱を繰り返すのは、間欠熱といいます
脈拍
血圧
加齢とともに動脈硬化が進行するため、収縮期血圧(最高血圧)が高くなり拡張期血圧(最低血圧)が低くなる傾向があります。大動脈疾患や進行した動脈硬化の場合は、左右の上肢で血圧に差がみられることがあるため左右での血圧測定も必要です。
また、個人差や日内変動も大きく、ちょっとした動きや緊張などでも血圧は変化します。とくに高齢者では、起立性低血圧に注意が必要です。
呼吸
高齢者は、一般に若年者と比べ換気量(呼吸で出入りする空気の量)は変わりませんが、残気量(息を最大に吐いた時に肺に残る空気の量)が増え肺活量が低下します。
呼吸状態が悪くなると、血液中の酸素が欠乏し皮膚や粘膜(爪や唇の周囲に多い)が紫色になるチアノーゼがみられます。
呼吸状態 | 特徴、原因疾患など |
起座呼吸 | 起座位や座位で頭を高くして足を低くした姿勢で呼吸する。臥位で呼吸困難が増強する左心不全の徴候。気管支喘息、肺炎などでもみられる |
口すぼめ呼吸 | 息を吸う時に鼻からゆっくり吸い、吐く時には口をすぼめてゆっくり吐いて、気管支を広げる呼吸。慢性閉塞性肺疾患(COPD)でよくみられる |
下顎呼吸 | 呼吸のたびに顎であえぐような呼吸。臨死期にみられ下顎呼吸が始まると1~2時間後に死亡することが多い |
チェーンストークス呼吸 | 頻呼吸、徐呼吸、無呼吸のサイクルが周期的に現れる呼吸。脳血管障害や心不全などの重症時にみられる |
クスマウル呼吸 | 異常に深い規則正しい呼吸。糖尿病性ケトアシドーシスや尿毒症でみられる。クスマウル大呼吸ともいう |
ビオー呼吸 | 不規則な周期で呼吸と無呼吸が交互に現れる呼吸。髄膜炎や脳腫瘍でみられる。間欠髄膜炎性呼吸ともいう |
意識レベル
覚醒度 | 刺激に対する反応 |
Ⅰ:刺激しないでも覚醒している | 1 だいたい意識清明だが、いまひとつはっきりとしない 2 見当識障害がある(日時、場所または人物がわからない) 3 自分の名前、生年月日が言えない |
Ⅱ:刺激すると覚醒するが刺激をやめると眠り込む | 10 普通の呼びかけで容易に開眼する 20 痛み刺激で開眼する 30 強い刺激を続けてかろうじて開眼する |
Ⅲ:刺激しても覚醒しない | 100 痛み刺激に対し、払いのける動作をする 200 痛み刺激に対し、少し手足を動かしたり、顔をしかめたりする 300 痛み刺激に反応しない |
検査と検査値
医療機関で行う検査を臨床検査という、検体検査(血液検査、尿検査など)、心電図や血圧などを測定する生理機能検査、画像検査、体格測定検査がある
検体検査
検体検査では、血液や尿の生化学的な検査が行われ、検査項目も多岐にわたります。疾病診断には欠かせないものであり、おもな検査項目や基準から外れた検査値の意味するところを把握しておく必要があります。
生理機能検査
心電図は、循環器系疾患の診断には不可欠な検査です。心臓の収縮・拡張の状態、冠状動脈のようす、心筋の異常、カルシウムやカリウムなどの電解質の異常の判定ができます。
狭心症の疑いや不整脈がある場合には、小型機器を装着して日常生活中の心電図を測定する24時間心電図(ホルター心電図)が利用されることもあります。
画像検査
X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などがあります。
胸部X線検査は、COPDや肺がんなどの呼吸器疾患のほか、心臓の拡大や胸水の貯留を確認でき、心疾患の診断にも有用です。
腹部X線検査は、腸閉そくや消化管穿孔、結石などが疑われる場合に使われます。
CT検査やMRI検査は、脳血管障害、頭部外傷、認知症などの診断に用いられます。
狭心症は、症状が出ていない時は心電図で異常を認めないことが多いため、確定診断には冠動脈造影やCT、MRI検査を行う必要があります。
体格測定検査
身長や体重、腹囲や上腕周囲長などを測定する検査です。
- 身長の短縮は、骨粗鬆症によるものが多く、早期発見につながります
- 体重の急激な減少は、がんや糖尿病の悪化、脱水などが疑われる
- 体重の増加では、肥満症のほか、心不全や肝硬変などによるむくみが出ている場合があります
- 腹囲は、メタボリックシンドロームの診断に使われ男性85cm、女性90cmを超えると、腹部型の肥満とされます
- 上腕周囲長は、男性20㎝、女性19㎝を下回ると低栄養の可能性があります
検査値とその意味
検査によって得られる数値の意味を理解することは、病気の早期発見につながります。
項目 | 基準値(単位) | 検査所見 |
体格指数(BMI) | 18.5~24.9(kg/m²) | 体重を伸長の2乗で割る 数値が大きいほど生活習慣病のおそれ 高齢者は、脊椎の変形や圧迫骨折により身長の測定値がみかけ上、低くなるのでBMIは本来の値より大きくなる |
白血球数 | 3.1~8.4(10³/μL) | 血液1μL中の白血球の数 細菌感染で増加、ウイルス感染で減少 |
赤血球数 | 男性4.35~5.55(10⁶/μL) 女性3.86~4.92(10⁶/μL) | 血液1μL中の赤血球の数 貧血や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などで減少 |
ヘモグロビン濃度 | 男性13.1~16.3(g/dl) 女性12.1~14.5(g/dl) | 血液1μL中の血色素の量 数値が低いと貧血の可能性 |
空腹時血糖 | 99以下(mg/dl) | 空腹時の血糖値 糖尿病の有無のめやす |
HbA1c | 5.5以下(%) | 糖がヘモグロビンと結合している割合 過去1~2ヶ月の平均的血糖レベルを反映。糖尿病の有無のめやす |
アルブミン | 3.9以上(g/dl) | 血清中に含まれるアルブミン量。アルブミンは結成に含まれるたんぱく質の1つ 肝疾患、腎不全、低栄養などで減少 |
総たんぱく(TP) | 6.5~7.9(g/dl) | 血清中に含まれるたんぱく質の総量 |
HDLコレステロール | 40以上(mg/dl) | 血清中の善玉コレステロールの量 数値が低いと動脈硬化を促進 |
nonHDLコレステロール | 90~149(mg/dl) | 血液中の総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いた値 動脈硬化や脂質異常症、甲状腺機能低下症などで増加、低栄養や肝疾患などで減少 |
LDLコレステロール | 60~119(mg/dl) | 血液中の悪玉コレステロールの量 数値が高いと動脈硬化の可能性 |
中性脂肪 | 30~149(mg/dl) | 血液中のトリグリセライド(TG)の量 |
AST(GOT) | 30以下(U/L) | 肝臓等にある酵素ASTの量 心筋梗塞、急性肝炎、アルコール性肝障害などで増加 |
ALT(GPT) | 30以下(U/L) | 肝臓等にある酵素ALTの量 急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝などで増加 |
ɤ-GTP | 50以下(U/L) | 肝臓等にある酵素ɤ-GTPの量 脂肪肝、アルコール性肝炎などで増加 |
クレアチニン(Cr) | 男性1.00以下(mg/dl) 女性0.70以下(mg/dl) | 血液中のクレアチニンの量。クレアチニンは腎臓から排泄される老廃物 腎臓悪化で増加。寝たきりや筋肉量低下で減少 |
尿素窒素(BUN) | 8~20(mg/dl) | 血液中の尿素窒素の量 腎機能悪化、脱水、消化管出血、高熱などで増加 |
尿酸(UA) | 2.1~7.0(mg/dl) | 血液中の尿酸の量 痛風で増加 |
CRP(C反応性たんぱく質) | 0.30以下(mg/dl) | CRPは体内で炎症や組織破壊が起きている時血中に現れるたんぱく質。炎症の程度の判定に使う 感染、高速、悪性腫瘍、膠原病などで増加 |
まとめ
- バイタルや検査値は利用者様の健康状態を把握する上で重要な要素です
- 視診で変化を判別するのは難しいですが、数字で判断するのは経験の浅い方でも判断ができます
- 介護職に必要なのは、バイタルサインや呼吸の状態、チアノーゼや意識レベルの判別だと思います
- バイタルや呼吸の状態、意識レベルが低い時はすぐに病院へ救急搬送する判断ができて病状が悪化する前に対応ができます
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