利用者様が高確率で罹患している疾病です。
どういう疾病なのかを知っているかどうかでケアの質が変わってきます。
疾病の特徴を知っていることでアセスメントがとりやすいと思います。
脳・神経の疾患
脳血管疾患【特定疾病】
区分 | 発症の原因 |
脳梗塞 脳の血管が詰まる疾患 | 脳血栓 血栓がつまる 脳塞栓 心臓などから流れてきた血栓が詰まる |
脳出血 脳の血管が破れる疾患 | 脳内出血 脳内血管の破裂 くも膜下出血 脳動脈瘤の破裂 |
動脈硬化を引き起こす高血圧、高血糖や高コレステロールなどが危険因子です。
脳血管障害の主要な症状・後遺症
意識障害
神経障害
- 運動障害(半身の運動機能が低下する片麻痺が多い)
- 言語障害
- 感覚障害
- 視野障害
- 排泄障害
- 嚥下障害
- 高次機能障害
感情障害
- 脳血管疾患は再発を繰り返すこともあり、血管性認知症にいたる原因になる
- 早期のリハビリテーション
- 基礎疾患の管理
- 生活習慣の改善
- 抗凝固薬の服用
- 後遺症により身体障害者手帳、障害年金、重度心身障害者医療費助成制度を利用できる
- 外見だけでは障害があることがわかりづらく、本人にも自覚のないことが多いです。そのため、本人や家族、周囲の人も含めて障害に対する理解を深め、症状の内容を把握してもらうように努めることが大切です
筋委縮性側索硬化症(ALS)【特定疾病】
筋委縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン(運動するための命令を筋肉に伝える神経)が障害を受けることで、全身の筋力が低下していき、筋肉がやせ衰えていく原因不明の疾患
おもな症状として、
球麻痺(延髄にある運動神経の麻痺)により、下や喉の動作が制限されることで、嚥下障害や構音障害がれられるようになる
四大陰性徴候として、感覚障害、眼球運動障害、膀胱・直腸障害、褥瘡は見られない
痛覚などの知覚神経や記憶力も保たれる
- 症状が進行すると歩行が困難になり、寝たきりの状態になります。
- 呼吸の萎縮によって呼吸困難が生じ、気管切開や人工呼吸器の使用、喀痰吸引が必要になってくる
- 特定医療費助成制度(難病法に基づく指定難病への医療費助成)、重度心身障害者医療費情勢制度、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス、在宅人工呼吸器使用患者支援事業などの活用できる制度や安楽な体位を工夫するなど、少しでも負担を和らげるように努めることが大切です
パーキンソン病【特定疾病】
パーキンソン病は、中脳(姿勢保持の中枢)の黒質に異常が起こり、神経伝達物質ドパミンの産生量が減少することで発症します。50~60歳代の中高年の人に多くみられ、認知症を合併することも少なくありません。
パーキンソン病は、特徴的な四大運動症状がみられます。進行すると、自律神経症状や幻覚・妄想などの精神症状が現れ自立が困難となります。
嚥下障害がみられることがあります。また、不顕性誤嚥(誤嚥してもむせることがない)が多いため注意が必要です。
ホーエン&ヤールの重症度分類 | 生活機能障害度 | |
ステージⅠ | 一側性障害のみ。機能障害はけいびもしくはなし | Ⅰ度 日常生活、通院にほとんど介助を必要としない |
ステージⅡ | 両側性障害。平衡障害はなし | |
ステージⅢ | 軽度~中等度の機能障害。姿勢反射障害と小刻み歩行やすくみ足がみられる。独立した生活が可能。 | Ⅱ度 日常生活、通院に部分的な介助を要する |
ステージⅣ | 高度の機能障害。歩行は介助なしで辛うじて可能。一人での日常生活は困難 | |
ステージⅤ | 介助がないかぎり寝たきりまたは車いすの生活 | Ⅲ度 日常生活に全面的な介助を要し、独力の歩行・起立が不可能 |
重症度分類がステージⅢ以上で、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものは、介護保険の利用者でも厚生労働大臣が定める疾病等に該当し、医療保険の訪問看護の対象になります。
基本は薬物療法ですが、機能低下を抑える運動療法、リハビリテーションも重要です。
進行性核上性麻痺/大脳皮質基底核変性症【特定疾病】
この2つの疾患は、パーキンソン病と合わせてパーキンソン病関連疾患んと称し介護保険の特定疾病に指定されています。
脳の黒質に変性をきたす
進行性核上性麻痺は、脳幹、小脳、前頭葉など広範囲に進行性の変性をきたし、大脳皮質基底核変性症は、大脳皮質に異常をきたします。
また、パーキンソン病同様、ホーエン&ヤールのステージⅢ以上で、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものは医療保険の対象になります。
- いずれもパーキンソン病に似た症状を示します
- 進行性核上性麻痺は、症状の左右差は目立たず早期から眼球運動障害や思考の遅延や無表情なその認知機能の低下が認められる
- 大脳皮質基底核変性症は、症状に左右差が目立ち進行性の非対称性失行がみられることが特徴です
- 両疾患とも進行すると、嚥下障害がみられる
いずれも初期にはパーキンソン病に対する薬が効くことがもありますが、効果は長続きしません。運動療法やリハビリテーションで対応します。
脊髄小脳変性症/多系統萎縮症【特定疾病】
脊髄小脳変性症は、何らかの原因により、脊髄や小脳の神経細胞が変性することで発症し歩行時のふらつき(失調性歩行)、動作時の手のふるえ、言語不明瞭などの運動失調をおもな症状とする神経疾患です。
これらの症状を呈する疾病の総称で運動失調を中心とする多系統萎縮症の一部も含まれます。自律神経症状や抹消神経障害による手足のしびれなどを伴うことがあります。
運動能力の維持のためのリハビリテーションや環境整備により、ADLを維持することが重要です。
多系統萎縮症では、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害をきたし突然死する可能性もあるので注意が必要です。
早老症【特定疾病】
早老症は、年齢に比べて老化現象が全身性あるいは特定の臓器に急速に進行する疾患です。糖尿病や骨粗鬆症、白内障などが若年時より発症しやすくなります。知能の低下などはみられません。
治療法は未確立なため、症状に対する対症療法が中心になります。
骨・関節の疾患
変形性関節症【著しい変形を伴うものは特定疾病】
変形性関節症とは、関節軟骨が失われ骨端どうしが直に接することで痛みや変形を起こす疾患です。関節の疾患ではもっとも多く高齢者の大多数に発症します。
- 肥満があると関節にかかる負荷が大きくなり、発症しやすくなります
- 股関節、膝関節などに起こることが多く、もっとも頻度が高いのが膝関節
- 関節の痛みやこわばり、腫脹などが現れる
根治は難しく、鎮痛薬などで痛みを抑えながら筋力強化や減量などで関節への負荷を軽くし、できるだけ進行を遅らせることが大事です。病態によっては、人工関節置換術などを行います。
関節リウマチ【特定疾病】
関節リウマチは、原因不明の全身性免疫異常で関節の炎症が主症状です。身体の左右対称に出現し指の関節などから始まり膝や股関節、肩関節などへ拡大します。
- 症状の日内変動があることが特徴
- 起床時に1時間以上つづっく朝のこわばり
- 痛み
- 熱感
- 腫脹
- 進行すると関節の不安定性、変形
- 関節以外では、発熱、体重減少、易疲労感などの全身症状
- 皮下結節
- 皮膚潰瘍
- 間質性肺炎
- 心臓の炎症
- 血管の炎症
薬物療法のほか、手術やリハビリテーションを行います。歩行障害には適切な装具、店頭予防のための環境整備、日常生活の補助には適切な自助具を用いることが重要です。
脊柱管狭窄症【特定疾病】
脊柱管狭窄症とは、脊柱の内部が狭くなり神経が圧迫されることで生じる症候群です。原因疾患としては、変形性脊椎症がもっとも多いです。
- 腰痛
- 下肢痛
- 痺れ
- 間欠性跛行
- 圧迫神経部位や狭窄が高度な場合、下肢等の異常感覚、膀胱直腸障害が現れることがある
30分ほど歩くと足の痛みや痺れを感じて、しばらく休むと回復し二食べ歩き出してからまた同じように休息をはさむということを繰り返すもの。
後縦靭帯骨化症【特定疾病】
後縦靭帯骨化症とは、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が老化によって骨化して脊柱管が狭くなり神経が圧迫されて生じる疾患です。
圧迫部位により、手足の痺れや四肢の麻痺などの症状がみれれます。進行すると歩行困難や排尿障害が現れることもあります。
圧迫されている神経を保護することを目的として、頸椎を固定する装具の装着や薬物療法、それらで効果がでなかったり症状が進行した場合は手術を検討します。
首を強く後ろに反らすことにより症状が悪化する場合がある。
骨粗鬆症【骨折を伴うものは特定疾病】
骨粗鬆症とは、骨が脆弱になり骨折しやすくなる疾患です。骨粗鬆症による骨折は寝たきりとなる主要な原因の一つです。
加齢、遺伝因子、ホルモン、栄養などが関与しますが、高齢者にみられる骨粗鬆症は、ほとんどが老化によるものです。
圧倒的に女性に多く、閉経後の女性ホルモン低下で急激に進行します。
男性では、カルシウム吸収の低下が起こってくる70歳以上で患者数が増えます。
骨が萎縮するため、腰背部の痛み、円背(背中が丸くなった状態)、身長の短縮などの症状がでます。
早期に骨粗鬆症のチェックを受け、カルシウムの摂取、運動習慣などで予防をします。発症後は、病態によっては薬物療法も行います。
大腿骨頸部骨折
高齢者は、加齢により骨密度が低下しさらに身体的機能の低下により転倒による骨折のリスクが高まります。
とくに大腿骨頸部骨折、胸腰部圧迫骨折、橈骨遠位端骨折、肋骨骨折がよくみられます。
なかでも大腿骨頸部骨折は、寝たきりにつながる可能性があるため注意が必要です。
転倒をきっかけに股関節に痛みが生じ、立つことができなくなります。
可能な場合は、人工骨頭置換術を行います。
リハビリテーションを行い早期離床をめざしますが、歩行能力は骨折前より低下する場合が多くなります。
骨折しないよう骨粗鬆症の早期発見と早期治療、転倒防止、転倒しても骨折しにくいよう床材の変更やヒップ・プロテクターの装着などで予防することが重要です。
循環器の疾患
高血圧
高血圧とは、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHgが高血圧の目安です。
血圧は年齢とともに高くなり、70歳以上のおよそ7割が高血圧といわれています。
高血圧には原因が明らかな二次性高血圧と直接の原因が不明な本態性高血圧があります。
大半は本態性高血圧です。
高血圧は動脈硬化をまねき、脳血管疾患、心不全などの要因となります。
初期には自覚症状が少なく、高血圧が続くと頭痛や頭重感が出現します。高齢者の場合は、
- 収縮期血圧の上昇に比べて拡張期血圧の上昇が低く、差が大きい
- 血圧が動揺しやすい
- 起立性低血圧や食後の血圧低下が起こりやすい
などの特徴があります。
塩分摂取や肥満の改善などの生活習慣の改善と症状により薬剤を使用します。
狭心症・心筋梗塞
狭心症は冠動脈が狭くなって心臓への血液がすくなくなるもの
心筋梗塞は冠動脈がつまって心臓への血流がとぎれ心筋が壊死するものです。
あわせて、虚血性心疾患といいます。
喫煙、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが危険因子となり、予防には危険因子の除去と管理が重要です。
狭心症では、前胸部痛や胸部圧迫などが生じます。発作時にはニトログリセリン舌下投与を行います。
心筋梗塞では狭心症の症状に加え、激しい胸痛、締めつけ感、左肩から頸部の痛みなどが生じます。
発症後短時間であれば、閉塞した冠動脈の再疎通療法が適応となる場合がありますが、ニトログリセリンは有効ではありません。
高齢者では、胸痛が少ない無痛性心筋梗塞もみられ注意が必要です。
舌の下に薬をおいて、薬物を吸収させる方法。薬物が舌の血管から直接吸収されるため、効果が早く・強く現れる。ニトログリセリンは、冠動脈の拡張を促す。
不整脈
- 心臓自体の異常のほか、ストレスや喫煙、睡眠不足、飲酒などで起こることもあり、高齢者では生理的に不整脈が増えます
- 脈拍が乱れて不規則になるもので、徐脈性(脈が遅くなる)、頻脈性(脈が速くなる)があります
- 脈の結滞(拍動が欠けること)は、健常高齢者でもよくみられます
- 血圧の低下、意識障害、心不全を伴う場合は、速やかな治療が必要です
- 徐脈性不整脈に対してはペースメーカーの植え込みが行わることがある
- 心房細動による不整脈では、血栓ができるのを抑えるワーファリンなどの抗凝固薬が投与されます
心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に血液が十分に供給できなくなる状態を心不全といい、加齢により発生率が増加します。
- 原因疾患は、心筋梗塞や不整脈、高血圧による心肥大
- 左心室の障害による左心不全、右心室の障害による右心不全があり、左心不全では呼吸困難、頻脈、血圧低下、チアノーゼなどの症状が、右心不全ではむくみ食欲不振、血尿などの症状がでる
Ⅰ度 | 心疾患はあるが身体活動に制限はない。日常的な身体活動では著しい疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じない無症候性 |
Ⅱ度 | 心疾患のため、軽度ないし中等度の身体活動の制限があるが、安静時には無症状。日常的な身体活動で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる |
Ⅲ度 | 心疾患のため、高度な身体活動の制限があるが、安静時には無症状。日常的な身体活動以下の労作で疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じる |
Ⅳ度 | 心疾患のため、いかなる身体活動も制限される。心不全症状や狭心痛が安静時にも存在し、わずかな労作でこれらの症状は増悪する |
重症度が、Ⅰ度~Ⅱ度の場合は、経過・予後ともに両行の場合がほとんどですが、Ⅲ度~Ⅳ度の場合、予後が悪くなります。
- 運動制限、塩分制限、薬剤内服が基本
- 病態により絶対安静、酸素吸入などを使用
- 呼吸困難時には、仰臥位ではなく起座位または半座位となることで呼吸困難が軽減
起座位は、上半身を90度に起こし、テーブルの上に置いたクッションなどを抱えて前屈みになった体位、半座位は、頭部と上半身を45度に起こした体位。
閉塞性動脈硬化症(ASO)【特定疾病】
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化を基礎疾患として血管が狭窄、閉塞して血液が十分に遅れなくなる疾患です。
- 歩くと下肢が痛み、立ち止まると痛みがひく(間欠性跛行)のが自覚症状
- 進行すると安静時の痛みや壊死へ至る
- 薬剤の服用
- 血管拡張やバイパス手術で対応しますが、進行した場合は難しい
- 他の動脈疾患を合併することがあるので要注意
消化器の疾患
胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍とは、消化液によって胃や十二指腸潰瘍が生じる疾患です。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染も潰瘍の原因となります。
胃の粘膜に生息する細菌。内服治療で除菌することが可能。
- 上腹部に痛みがあり、一般的には胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが増す
- 悪化すると出血し、口から出る吐血や便に混じる下血を起こします。大量出血や潰瘍による穿孔(消化管穿孔)が生じると、生命にかかわる
- 軽症の場合は薬物療法で完治
- 出血や消化管穿孔などでは入院、手術が必要
胆石症・胆嚢炎・胆管炎
胆石症は、肝臓で産生された胆汁が胆嚢や胆管にたまって固まった結石(胆石)によって生じたもの
胆嚢内にできた結石を胆嚢結石
胆管内にできたものを胆管結石
これらの結石が胆汁の流れを悪くすることで胆嚢炎、胆管炎が発生
- 胆嚢結石の場合、無症状のこともありますが、食事で胆汁の量が増え、疝痛発作(みぞおちの痛み)
- 胆嚢炎の場合、発熱、右季肋部痛(右上腹部の痛み)、吐き気などが生じる
- 胆管炎の場合、発熱、悪寒、黄疸、嘔吐、意識障害などが生じ、悪化すると敗血症やショック状態になることもある
- 無症状の胆嚢結石であれば、経過観察か胆石溶解薬を内服
- 症状がある場合は、胆嚢摘出を行うこともある
- 胆嚢炎は、絶飲食で薬物治療を行いまが、重症例ではドレナージにより胆汁を排出します。胆管炎でも同様です
体液の一部をドレーン(排液管)を用いて体外へ排出すること。内視鏡を用いて管を入れるものと、身体の外から管を入れるものがある。
肝炎・肝硬変
肝炎とは、肝臓に炎症が生じたものです。急性肝炎と慢性肝炎があります。
分類 | 原因 | 症状 |
急性肝炎 | 肝炎ウイルス、自己免疫疾患、薬剤アレルギーなど | 全身の倦怠感、食欲不振、腹痛など |
慢性肝炎 | 肝炎ウイルス(B型、C型)がもっとも多い。その他にアルコール性肝炎、自己免疫疾患など | 初期には無症状で、進行すると肝細胞が壊れ、肝臓が線維化する肝硬変が起きる |
- 急性肝炎の治療は安静臥床が主となる
- 一般に予後は良好
- 慢性肝炎が進行すると根本的な治療は肝移植のみとなるため、肝硬変の進行を食い止める薬物治療が行われる
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは、直腸から大腸粘膜の炎症を起こし大腸全体で潰瘍が生じる原因不明の疾患です。
- 初期には血便や下痢、腹痛、とくに持続して繰り返す血性の下痢、粘血便が特徴
- 重症例では貧血や発熱、食欲不振に体重減少
軽症、中等度であれば、薬物治療、重症例では入院治療し、場合によっては手術で大腸切除を行います。
腎臓・尿路の疾患
腎不全
腎不全は、なんらかの原因で腎臓の機能が低下していく疾患です。急性腎不全、慢性腎不全の急性増悪、慢性腎不全の3つに分けられます。
分類 | 原因 | 症状 |
急性腎不全 慢性腎不全の急性増悪 | 脱水、心不全、薬剤、尿路の閉塞など | 乏尿、悪心、嘔吐、浮腫、体重増加、動悸、易疲労感など |
慢性腎不全 | ほとんどの腎機能を障害する疾患による腎炎の慢性化。とくに、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎など | 進行に伴い、全身倦怠感、動悸、頭痛、浮腫など。乏尿・多尿いずれも起こりうる |
急性腎不全・慢性腎不全の急性増悪では、適応であれば血液透析、慢性腎不全では、食事療法を中心に行い、人工透析の開始を遅らせることが重要
前立腺肥大
前立腺肥大とは、精液をつくる前立腺が腫れ、膀胱を刺激し、頻尿になります。
50歳代から症状が出始めることが多く、進行すると、前立腺が尿道を圧迫し尿閉になることがある。
多くは薬物療法で改善されます。進行して、日常生活に支障が出たり、尿閉になった場合は手術適応となります。
がん
がんは、過剰に増加した細胞の塊(腫瘍)が、周囲の正常な組織に移りもともとあった組織を破壊して増殖していくことから、悪性腫瘍、悪性新生物とも呼ばれます。
男女を含めた日本人の死因第1位で、男性では肺がん、女性では大腸がんがトップです。
高齢者のがん
高齢者と若年者で質的な差はなく、症状や治療方法も変わりませんが、高齢者の場合は発症頻度と多発がん(複数の臓器に同時にがんが生じる)の頻度が増加します。
臓器別では、胃がん、肺がん、大腸がんが多く、胃がんは減少傾向、肺がんと大腸がんは増加傾向
症状は増気により異なりますが、終末期にはいずれのがんでも、全身倦怠感、食欲不振、痛みがみられる
- 手術、化学療法、放射線療法などが行われる
- 末期の場合は、積極的な治療や延命治療に代えて痛みなどの苦痛を除く緩和ケアが選択されることもある
代謝異常による疾患
糖尿病
糖尿病は、膵臓でつくられるインスリンの不足や欠如により糖の取り込みが阻害され、血液中に糖が出て、慢性の高血糖状態が続く疾患です。
自己免疫などにようるインスリン分泌障害で生じる1型糖尿病、遺伝因子や環境因子によるインスリン作用不足で生じる2型糖尿病、、そのほか、市電子の異常や薬剤によるもの、妊娠を契機として発症するものなどがあり、2型糖尿病がほとんどを占めます。
- 初期には無症状のことが多く、進行すると口渇、多飲、多尿、倦怠感、体重減少が現れます
- 高血糖状態が長期に及ぶと合併症を生じます
- 動脈硬化性疾患の危険因子であり、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などが起こりやすくなります
- 食事療法と運動療法が主となる
- 血糖降下薬の内服やインスリン注射などの薬物療法
- 薬物療法では、インスリン注射をしなくても内服薬の効果が出すぎて、低血糖を起こすおそれがあるので注意が必要
脂質異常症
脂質異常症とは、血液中の脂質が基準値よりも高いあるいは低い状態で、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高中世脂肪血症に分けられます。
特に症状はなく血液検査などで発見されます。動脈硬化が進行しやすく、なかでも高LDLコレステロール血症には注意が必要です。
食事療法、運動療法、薬物療法などを行います
低ナトリウム血症
低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が135mEq/L以下の状態のことをいいます。
単にナトリウムが絶対的に不足するよりも、何らかの原因で、体内の水分バランスが崩れて水分が過剰となり、相対的に血清ナトリウム濃度の低下が進むことも多いです。
- 大量飲水(1リットル/時以上)
- 下痢
- 嘔吐
- 過度の運動
- 高齢
- 心不全
- 肝不全
- 腎不全
- 薬物使用
- 適切な点滴や服薬
- 塩分制限などが体内の水分バランスを崩す
- 嘔気
- 食欲低下
- 倦怠感
- 頭痛
- 無気力
- 興奮
- 見当識障害
- 重度になると痙攣、昏睡、呼吸停止、死亡
予防では、発汗量が多い時は水分補給と一緒に塩分補給を忘れないようにします。また、原因により治療が異なるので医師の指示のもとに対応します
熱中症
熱中症とは、高温・多湿な環境下において徐々に体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態です。高齢者では、屋内外を問わず起こしやすく注意が必要です。
- 発汗に伴う脱水
- 末梢血管の拡張による全身臓器への循環不全
- 塩分不足による低ナトリウム血症
- 風邪薬に含まれる抗ヒスタミン薬や抗コリン約(発汗抑制)
- 予防には、水分、塩分、糖分の十分な摂取が必要
- 治療は早急に行い、首、腋窩、大腿などの太い血管をアイシングすると効果的です
- 意識がなければ救急者を早急に呼びます
- 一般に熱中症では発汗が多いため腋窩温よりも直腸温のほうが正確です
呼吸器の疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)【特定疾病】
肺気腫と慢性気管支炎を総称して慢性閉塞性肺疾患とよびます。
- 原因は喫煙
- 気道や肺が炎症を起こし呼吸に障害が出る疾患
- 歩行時や階段昇降での息切れ
- 慢性の咳や痰
- 全身の炎症
- 栄養障害
- 骨格筋機能障害
- 骨粗鬆症
- 予防、治療ともに禁煙が基本
- 進行させないためには、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が有効
- 薬物療法では、気管支拡張薬やステロイド薬の吸入が行われます。
- 重症化すると酸素療法が必要
肺炎
肺炎とは、細菌やウイルスの感染によって生じる肺の炎症です。
高齢者では、加齢に伴い唾液の分泌量が低下したり、口腔や咽頭の分泌物を繰り返し誤嚥することによって引き起こされる誤嚥性肺炎が増加します。
肺炎による志望者の95%以上が高齢者です。
咳や痰、高熱、呼吸困難などの症状がみられ、重症になるとチアノーゼが現れることもあります。
高齢者の場合は症状がはっきり出ないこともあり、元気がない、食欲低下なども肺炎を疑う兆候となります。
- 治療は抗菌薬が主となりますが、脱水に注意が必要
- 予防として、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されている
肺結核
肺結核とは、肺結核による肺の感染症です。
若年時に肺結核に罹患している場合、加齢による免疫の低下のため、高齢になって再発することがあります。
咳や痰、全身倦怠感や微熱、体重減少がみられる
排菌が認められる場合は、専門施設での入院治療となります。抗結核薬の内服で、少なくとも6カ月間の加療が必要
呼吸器感染症として、急性上気道炎(風邪)と急性気管支炎がある。
前者は一般的に抗菌薬は不要ですが、後者は二次感染により肺炎を合併する場合があるので、検査のうえ、必要に応じて抗菌薬を使用します。
喘息
喘息とは、気管支が炎症を起こし、気道が狭くなる疾患です。アレルギーがかかわることが多いですが、原因物質が特定できないケースもあります。
風邪などがきっかけとなって発作が起こり、せきや痰が増え、喘鳴を伴い呼吸が苦しくなります。
子供に多い疾患と思われがちですが、中高年での発症も少なくなく、また子供に比べて治りにくいことが多いです。
呼吸器の疾患に罹患している人が、呼吸をする際に咳や痰がからんで、ヒューヒュー、ゼーゼーといった音が出ること。
- 発作に対して、即効性の発作治療薬の吸入が行われる
- 気管支の炎症を抑えるステロイドなどにより、無発作時も治療を続ける必要がある
皮膚の疾患
疥癬
疥癬とは、ヒゼンダニの寄生による感染症です。
- 腋窩、外陰部、手に発疹が生じ、かゆみを伴います
- ふつうの回線と、ダニの数が非常に多いノルウェー疥癬(角化型疥癬)に分けられますが、いずれもヒゼンダニの感染が原因です
- ノルウェー疥癬は、ダニの数が非常に多く、感染力も非常に強いため、高齢者施設などで発生した場合は、集団感染を避けるため患者の一定期間の個室での管理が必要
- 寝具等の共用をさけ、洗濯を別にするなど、感染防止の対策をとる
薬疹
薬疹とは、体内に投与された薬剤に対するアレルギーによる発疹です。
長期間服用していても生じるなど、すべての薬剤に薬疹を引き起こす可能性があります。多くは、服用後1~2週間後に起こります。
薬疹が生じる原因となった薬剤を速やかに中止
白癬・皮膚カンジダ症
- 白癬は、皮膚の角質層がカビの一種である白癬菌に感染することで発症します
- 頭部・手・足のかゆみを引き起こし、爪に感染すると爪が白く濁って厚くなります(爪白癬)
- 皮膚カンジダ症は、健常人の皮膚に常在するカビの一種であるカンジダ菌が、免疫機能低下などで異常に増殖することで発症します
- 軽いかゆみを伴う発疹や水泡がみられる
- 爪白癬以外は、軟膏やローションなどの外用薬を塗布します
- 白癬は家族内感染を起こすのでスリッパや足ふきマット等は共用しないようにする
- 皮膚カンジダ症は、重症例では心臓弁や腎臓、目などに血流にのって皮膚カンジダ症が広がることもあるので注意が必要です
皮脂欠乏症・皮膚掻痒症・脂漏性湿疹
皮脂欠乏症とは、加齢により皮膚の表面の皮脂が減少すると、皮膚が乾いた状態です。
皮膚搔痒症とは、皮脂欠乏症の状態で空気が乾燥している冬などにかゆみが出ることです。
さらに、湿疹が生じる脂漏性湿疹になります。
- 皮脂欠乏症では、皮脂を取り過ぎないように入浴時に皮膚をこすり過ぎないようにすることが重要です
- 皮膚の保湿に努めます
- 皮膚掻痒症も同様に皮膚の乾燥を防いで、かゆみが生じないように努める
- 脂漏性湿疹は、抗真菌薬やビタミン薬の内服、保湿・保清、また、生活リズムを整えることが重要です
帯状疱疹
帯状疱疹とは、水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで生じるウイルス性の皮膚疾患です。
水痘を起こしたウイルスが潜伏し、次に活動する時に帯状疱疹として現れる。
右半身あるいは左半身に、線状に水泡ができてかなりの痛みが伴います。
軽症の場合は自然治癒しますが、高齢者の場合重症化して神経痛や潰瘍などを残すことがあるため早期治療が肝心です。
耳鼻の疾患
難聴
難聴は、音が聞き取りづらくなる症状で障害を受けている部位によって伝音性難聴と感音性難聴、その両者が混じった混合性難聴に分類されます。
種類 | 原因 | 特徴 |
伝音性難聴 | 耳垢がつまった耳垢塞栓、中耳炎や鼓膜穿孔などによる伝音系(外耳・内耳)の障害 | 耳垢の除去 原疾患の治療で改善の可能性あり 補聴器が有効な症例が多い |
感音性難聴 | 感音系(内耳・聴神経系)の障害 | 加齢性難聴、メニエール病、突発性難聴などでみられる 高齢者、特に男性に多く、高音域が障害される 補聴器は無効な症例が多い |
混合性難聴 | 両者の混合 |
- 加齢性難聴は、まず補聴器の装着で対応を試みますが違和感や雑音などで敬遠されることが多い
- 重度の難聴は、人工内耳を埋め込む手術を検討
- 難聴のある人とコミュニケーションを図る時は、静かな明るい場所で正面を向いてゆっくり・はっきりと簡潔に話すようにします
めまい・ふらつき
- 平衡感覚は、内耳での電気信号を脳幹・小脳などの中枢神経が処理することで保たれている
- 平衡感覚障害とは平衡感覚に関わる部位のいずれかに障害が起こると、四肢・体幹に異常がないにもかかわらず起立や歩行に何らかの異常をきたし、めまいやふらつきが症状がでることがある
- 良性発作性頭位変換性めまい、メニエール病などが高頻度にみられる
- 高齢者は起立性低血圧や脱水によるめまい・ふらつきがみられる
- めまい・ふらつきは、脳腫瘍やパーキンソン病、血圧のコントロール不良、薬剤の副作用でみられることがある
眼の疾患
白内障・緑内障
- 白内障とは、水晶体が混濁して視力が低下する疾患です
- 白内障は、加齢が原因で生じることが多く70歳以上で90%、90歳以上では100%が白内障とされます
- 緑内障とは、眼圧が上昇して視神経が障害される疾患です
- 眼圧が正常で、緑内障の神経障害を起こす聖女言う眼圧緑内障が多くみられる
- 白内障は、ある程度進行した時点で眼内レンズ挿入の手術を行う
- 緑内障では点眼薬、レーザー治療、手術療法を行う
- 緑内障は、自覚症状が乏しく、進行すると視力回復が困難となるため、早期発見・早期治療が重要
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性症とは、網膜の中心にある黄斑という部分に老廃物などが蓄積して障害が生じる、難治性の眼疾患です。
高齢者の重篤な視力障害の原因の1つです。欧米では成人の失明原因の第1位、日本でも失明原因の上位に位置します。
視野の中心部がゆがむ、真ん中が見えなくなる(中心暗点)、視力低下などが症状です。
対症療法を中心とした治療が行われる。最近では、新しい治療法も開発されてきた。
まとめ
- 高齢者に起こりやすい疾病はほとんどの方で発症されています
- 体は消耗すると考えれば脳、心臓、腎臓、膵臓は働き過ぎた代償に認知症、狭心症、心不全、慢性腎不全、糖尿病が起こります
- 特定疾病は高齢になると発症が多い印象です
- 特定疾病は原因が不明のことが多いです
- 現場にいると高齢者に起こりやすい疾病は、誰かお持ちの方が多いです
- 対処法を知って急変や普段のケアでも注意しなければいけません
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