特別養護老人ホームの機能訓練指導員の仕事は、入居者のゴールによって仕事内容が変化します。
私も、柔道整復師の資格で機能訓練指導員をデイサービスと施設でしていました。
今は、現役のケアマネをしています。ケアマネ視点の機能訓練指導員についても話していきます。
特養の機能訓練指導員の仕事は、ズバリ日常生活動作(ADL)の維持です。
特養の入居者は要介護3以上で高齢な方がほとんどです。そうなると、歩行器を使用されている方が杖歩行になったり車椅子の方が歩行器になることはほとんどありません。
特養以外の施設でも、ADLの維持が機能訓練指導員の仕事になります。
- ADLの維持するための機能訓練
- 機能訓練をするための訓練計画を作成
- 個別機能訓練加算を取る時は、個別機能訓練計画を作成
- 生活動作の機能訓練
- ADLの評価
- 記録の作成
- ご家族やご本人への訓練や状態の報告
機能訓練指導員の必要性は、生活の質の向上、介護度の維持、医療依存から脱却
機能訓練指導員が、入居者のADLを維持することで得られるものは入居者のメリット、施設職員のメリット、医療のメリットになります。
入居者の生活の質が向上する
ADLが維持されていれば、入居者の方は今まで通りの生活をすることができて生活が充実します。
もし、機能訓練の質が悪く歩行器を使用していた方が、車椅子になるとそれだけ生活に制限ができます。
できなかったことが、身体機能の改善というより生活動作の改善ですることができると入居者は職員に頼ることなく動けます。
介護度を維持することで介護職員の負担が維持される
ADLの維持は、介護度の維持でもあります。
介護度が上がると介護量が増えます。今の介護人材の不足状態で、介護量が増えると業務量が増え介護業界からの離職が増えます。
介護度が上がることは、しょうがないですが機能訓練で介護度を維持することができれば入居者だけでなく介護職員にもメリットがあります。
医療依存から脱却
体の状態からくる痛みは、機能訓練で取れることがあります。体力がつけば体への負担が減り、腰痛や膝痛が減れば湿布の量が減り鎮痛薬の処方が減ります。
痛ければ湿布や鎮痛薬を医療保険で処方されますが、半分は国費等の税金であったり若い世代の保険料です。
介護だけでなく医療の財政も厳しいままです。機能訓練をしっかりすることで薬等の処方が減れば、介護医療費問題に貢献できます。
機能訓練指導員の具体的な業務内容
個別機能訓練計画の作成と実施
- アセスメント: 入所者の身体機能、認知機能、精神状態などを詳細に評価
- 目標設定: 入所者と相談し、達成可能な具体的な目標を設定
- プログラム作成: 目標達成のために、運動療法、動作訓練、日常生活動作訓練など、多様な訓練プログラムを作成
- 進捗管理: 定期的に訓練効果を評価し、計画を修正
グループトレーニングの実施
- 運動療法: 体力向上、筋力強化、関節可動域拡大などを目的とした運動
- 認知機能訓練: 記憶力、計算力、判断力などの認知機能を維持・向上させるための訓練
- 社会参加支援: グループ活動を通じて、コミュニケーション能力や社会性を高めます
仕事の1日の流れ
機能訓練指導員は、特養では1人配置が多いです。特養の定員で多いのは、60名です。
60名を週5日の勤務で機能訓練していきます。専任の機能訓練指導員であれば60名は機能訓練していきます。
どうしても、ケアスタッフが足りない時は、機能訓練指導員でもケアの手伝いをする可能性はあります。
- 8:30出勤
申し送りを聞いて入居者の状態を把握する。
- 9:00機能訓練計画を確認する
施設全体の申し送りを聞く、1日の段取りを確認する。
- 9:30機能訓練を開始する
機能訓練をする器具があるスペースでしたり、ベッド上でする。グループトレーニング等もする。
- 12:00食事の配膳を手伝う
食事中は、機能訓練は無いので食事の配膳を手伝うことがある。
- 12:30休憩
入居者は、昼食後に午睡をします。
- 13:30記録等をする
介護記録にも機能訓練の記録をします。
- 14:00午後の機能訓練を開始する
午睡が長い方もいるため、訓練ができる方から誘導する。
- 16:00記録等や掃除をして終了業務に入る
施設の夕食は、早いので訓練を早めに切り上げて記録や機能訓練のスペースを掃除する。
- 17:00食事の配膳等を手伝う
配膳や下膳を手伝うことがあります。入居者が訓練をしない時は、手伝いをします。
- 17:30退勤
残業なく時間通りに退勤できます
機能訓練指導員になる資格は、8つです
特養だけでなくデイサービスやグループホーム、老人保健施設の機能訓練指導員は、8つの資格いずれかを取得していればなることができます。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護師または、准看護師
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- 一定の実務経験を有するはり師及びきゅう師
鍼灸師は、機能訓練指導員を配置した事業所で半年以上の実務経験を積む必要があります。
あとは、特養の機能訓練指導員の求人で採用される必要があります。
機能訓練指導員に必要なスキルは、コミュニケーション力と専門知識
機能訓練指導員は、リハビリテーションの専門職です。身体機能の状態を記録に書いたりご家族やご本人に説明しなければいけません。
身体機能を評価するには、入居者を観察し専門知識に基づいて考察しなければいけません。
身体機能を評価するにあたって、対象者の病歴や服薬している薬の情報も加味しないといけません。
- コミュニケーション能力
- 観察力
- 体力
- 専門知識
コミュニケーション能力
ご家族やご本人に身体機能を報告する必要があります。その時に、どのように伝えるかも重要です。
機能訓練をしていることを伝えた上で、なぜADL低下が起きているのかを説明しなければご家族やご本人が納得しない場合があります。
特に、ご家族は機能訓練をしている場面を見ていないので結果しか見られません。機能訓練が足りないのではと考えるご家族もいらっしゃいます。
個別機能訓練計画を作成している時は、計画を理解してもらえるように説明する必要があります。
観察力
日々、入居者に接している中で変化に気付くようにならなければいけません。いつから、足をひきづりながら歩行しているのか等を気付かないといけません。
体力
要介護3だとほとんどが、車椅子での生活です。立位も取れませんので介助する時の体への負担はありますし、機能訓練をする方が多いと体力が必要です。
専門知識
解剖生理学、運動学、病理学、薬学、疼痛緩和の方法などの色々な専門知識が必要です。
入居者の身体機能に病気や薬が関係していることも評価していかなくてはいけません。
例えば、睡眠導入剤を服用された後の歩行不安定で転倒され骨折されることもあります。
また、認知症の薬で歩行が不安定になる薬もあります。薬服用後の行動で危険な行為は、予防しておかなければいけません。
下肢に浮腫があり歩行がしづらい時の浮腫の原因を心臓なのかリンパの圧迫なのか、原因を考えなければいけません。
機能訓練指導員の仕事の魅力は、やりがい
- やりがい: 毎日のように関わるので入所者の状態が改善が分かり、感謝の笑顔が見られることが大きな喜びです
- 専門性を活かせる: 自分の専門知識や技術を活かして、人々の役に立てることができます
- 多様な人々との出会い: 様々な人生背景を持つ人々との交流を通じて、人間関係を築くことができます
- 自己成長: 新しい知識や技術を学び続けることで、自己成長を続けることができます
まとめ
- 特養は、「終のすみか」と言われるので大幅なADLの改善は見られませんが、ADLを維持するだけでも社会貢献ができます
- 特養での機能訓練は軽視されることが多いですが、ADLの維持で介護職員の体力的負担は軽減されます
- 特養では、機能訓練指導員は一人であることが多いです
- 個別機能訓練加算を算定している施設では、個別機能訓練計画を作らなければいけません
- 施設の機能訓練指導員は、入居者に訓練ができない時は施設の業務を手伝います
- 機能訓練指導員として働ける資格は、決まっています
- 特養の入居者は、高齢で理解力が低下していることが多いので身体状況はご家族に説明することが多いです
- 施設の機能訓練指導員は、必要最低限の薬や病気の知識は必要です
- 機能訓練指導員は、医療のトータル的な知識と自分のリハビリテーションや施術のスキルと知識が活かされる仕事です
- 仕事を続けていると疼痛緩和や病気の早期発見など機能訓練指導でもできることが多くなります
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